In the Valley of Gods

制作者: Campo Santo
The studio
自分だけのストーリーを紡ぐ

Campo Santo においてストーリーテリングが最優先されるのは不思議なことではありません。Telltale、Irrational、Double Fine、Lionhead などから来たメンバーで構成されるチームは、場所と登場人物とストリーとが交わる十字路に立っていました。「私たちを駆り立てていたものの 1 つはプレイヤーを虜にするゲームとは何かを明らかにしたいと思う気持ちです」と Campo Santo の共同創設者、Jake Rodkin は言います。「単にストーリーを語ればいいというものではなく、ゲームのキャラクターやそこで語られているストーリーとの繋がりをプレイヤーに実感させられるかどうかが重要です」

実際、Campo Santo の主要なデザイン哲学の 1 つは、プレイヤーにとって主人公のスキンがしっくり来るかどうかです。キャラクターの身体を意識することや精緻な手のアニメーションなどはプレイヤーをゲームに引き込み、キャラクターの視点を自分のものとして受け入れるのに役立ちます。

The self-described “scrappy” Campo Santo team in San Francisco

The self-described “scrappy” Campo Santo team in San Francisco

初のタイトルにして賞も獲得したナラティブアドベンチャーゲーム『Firewatch』の開発で多くのことを学び、自信を付けた Campo Santo は、AI 制御のアクターが登場してさまざまな冒険をする、さらに野心的な『In the Valley of Gods』の制作に取りかかりました。現在はストーリーの展開を考えている段階ですが、Campo Santo は、心に残るキャラクターインタラクションが豊富に盛り込まれた魅力あふれる作品にするための作業も進めています。

The project
森を抜けて砂漠の中へ

『In the Valley of Gods』で語られるのは、友情が試される物語です。プレイヤーが操るのは、スランプから抜け出そうともがく 1920 年代のドキュメンタリー映像作家の Rashida です。Rashida のブーツが踏み締めるのは『Firewatch』の山がちなワイオミング州の森林の土ではなくエジプトの砂ですが、彼女もまた実際の人間が経験するような、深く複雑な過去と悩みを抱えています。

As with Firewatch, character development is central to In the Valley of Gods

As with Firewatch, character development is central to In the Valley of Gods

2 作目となる今回、Campo Santo は『Firewatch』で培ったテクニックに磨きをかけてプレイヤーが Rashida と一体化できるようにしつつ、Rashida がもう二度と一緒に仕事をしないと誓った Zora を仲間のキャラクターとして登場させることで、ストーリーに深みを加えています。

復活した 2 人の関係は、プレイヤーの選択に基づいて反応する Zora とのやり取りを通じて進んでいきます。「『Firewatch』では、Henry と Delilah の関係は本当に素晴らしく楽しいものでしたが、実体のない声でもう 1 つのストーリーが語られるというのは、陳腐なものになる可能性がありました。これが何度も通用するとは思えません。次に大きな一歩を踏み出すとすれば、それはプレイヤーのアクションに反応する、感情豊かなフルアニメーション NPC の登場になると考えていました。Zora は孤独感を払拭するためだけではなく、よりインパクトのある方法でストーリーとキャラクターの関係性を表現するためにそこにいるのです」と Rodkin 氏は語ります。

『In the Valley of Gods』のトレーラーを見る
The reveal
計画を立てる余裕

『In the Valley of Gods』では、Campo Santo はゲームの開発初期段階の大半を、ストーリーとキャラクターの肉付け、ビジュアルスタイルの構築、思い描いたことを実現するための独自ツールの開発といったプリプロダクションに費やしました。その成果は 2017 年の Game Awards 中にリリースされたトレイラーで見ることができます。

これは『Firewatch』のときとは異なるアプローチです。そのときには、すべての開発フェーズがほぼ同時進行で進められました。制作が始まると、ゲームプレイとレベルデザインの大半が、ストーリーや会話と並行して進められたのです。「単にそうする必要があったということもありますが、『Firewatch』をその方法で開発した大きな理由は、それが可能なほどゲームのデザインがシンプルだったからです」。『In the Valley of Gods』では、かなり高い目標に照準を合わせていたので、緻密な計画が必要だったのです。

「トレイラー用のシーンの開発を通じて、アート、テクノロジー、レンダリングの担当者たちはコンセプトペインティングをエンジン内で実現する方法を見つけだしましたが、みんな期待以上の成果をあげてくれました。今私たちは、そこで得られたさまざまな教訓を活かして、あらゆる面で改善を進めているところです。私たちは Unity とかなり密接に協力しながらこの作業に取り組んでいます。自分たちがやっていることがコードそのものでなくても、せめて発見という形でコミュニティに、そしてできれば Unity にも還元されることを願っているからです」

より良い選択のための調査

トレイラーの大部分は Unity で既に高いフレームレートでリアルタイムに実行されていますが、これはまだあくまでもチームでゲームの見た目を整えたり、新しいテクノロジーやシェーダーを試してみたりするためのたたき台にすぎません。

特に目を引いたのが、仲間のキャラクターの Zora です。その滑らかなアニメーションと記憶に残るシルエットのみならず、フェイシャルアニメーションや本当に生えているかのようなボリューミーな髪の毛が印象に残ります。その髪の毛には、いくつかのカスタムシェーダーと、リムライトを正確に表現するための面白いベイキングテクニックが使われています(詳細については、こちらの記事をご覧ください)。

Zora の髪に対するバックライティングテスト

トレイラーでは、髪の毛は手作業でアニメーション化されていますが、よく見ると、Zora のイヤリングに採用されているシンプルな物理スプリングシステムも垣間見ることができます。このシステムは、彼女の美しい巻き毛にいっそうのリアリティとダイナミックな反射を加えるために使われる予定です。

結局最終版のトレイラーからはカットされたシーケンスの中にも、最終版のゲームに計画されているステージに活かされたものもあります。2 人のキャラクターが水没した地下の墓の中を、完全にシミュレートされた水に腰のあたりまで浸かりながら歩いているシーケンスなどです。Rodkin 氏は、「トレイラーの中でも技術的にはすごいシーンの 1 つだったのですが、私たちがその時点で考えていたストーリーにはそぐわなかったため、カットしました。開発の進行に伴う自分たちの進化にとても期待しています」と言います。

正解はときに単純なこと

ハイエンドの野心的なビジュアルはいいものです。きれいな場所、作り込まれた人物、リアルなライティングやシャドウは、プレイヤーを環境に入り込みたくなる気持ちにさせます。しかしたいていの場合、成功の鍵を握るのはもっと些細な、そこまで尖っていない技術的機能だったりします。それは Campo Santo の美しいキャラクターアニメーションにも当てはまります。Campo Santo は、『Firewatch』の Henry に使用していた巨大なアニメーションステートマシンから、2017 年に段階的にロールアウトされた Playables API がベースのローカライズされたステートマシン、単一のアニメーション、タイムラインに移行しました。

『Firewatch』の Henry については、アニメーターは常に全身環境を求めていました。つまり、一人称視点で人物が歩き回ったり、ロープを登ったり、何かを拾ったりする様子が見える環境です。「『Firewatch』の空間は 1 つの巨大な連続体です。ロード画面もなければ、世界を切り替えるためにゲームの要素を一掃する機会もありません。これが当時何を意味したかというと、ゲーム内のどこかで起こる可能性のある、あらゆるインタラクションに対応するために Mecanim ステートマシンという、読むのが難しくて操作はもっと難しい、巨大な鳥の巣が必要だということでした」と Rodkin 氏は明かします。

 Like Zora, the team has its eyes on the horizon

Like Zora, the team has its eyes on the horizon

Playables API は、初心者向けに複数の機能をまたいでデータソースを整理したり共有したりする方法を提供します。ゲームプレイのスクリプト、アニメーション、サウンドをすべてグラフで視覚化して、複数の機能のデータを整理しておけます。

「今回のしくみでは、キャラクターが持ち運ぶデータがはるかに少なくて済みます。つまり、世界を整理しやすいのです。オブジェクトですばやく効率的にデータを共有できるということです。任意のアニメーションをブレンドできることに変わりはありませんが、データを特定のオブジェクトに紐付けられるようになっています」

「たとえば椅子に座るときには、キャラクターがオブジェクト自体と相互作用するタイミングで椅子のアニメーションブレンドを共有できます。ありがたいことに、これによってスレッドをたどるのが困難な巨大で絡み合うウェブではなく、小規模なアニメーションステートマシンで済むようになります。パイプラインの詳細を調整する作業はまだ続いていますが、とりあえず試してみた範囲では、かなりの手応えを感じています」と Rodkin 氏は締めくくっています。

道はまだ続く

『In the Valley of Gods』の開発はまだ始まったばかりです。進捗についてはこのページで詳しく紹介するので、チェックをお忘れなく。2019 年に、Campo Santo がただでさえ美しかったこのアドベンチャーゲームに Unity の新機能で命を吹き込んだ手法についても紹介する予定です。

Campo Santo は多種多様な Unity の機能を駆使してキャラクターの Rashida と Zora に命を吹き込みました。

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