クラフタースタジオ:Unity 開発者のケーススタディ
クラフターによる最新の長編映像作品『ソウタイセカイ』には、世界で最も有名な街のドラマチックなシーケンスが含まれていますが、既存のレンダリングソリューションでは最も複雑なシーンを簡単には処理できませんでした。そこでクラフターは目標を達成するために、Unity のリアルタイム 3D 機能に注目しました。
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目標
『あした世界が終わるとしても』の複雑な群衆のシーンを制作すること
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プラットフォーム
DLP/SXRD(劇場公開用)
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プロジェクトのスタッフ
約 10 人が Unity を利用(モデラー、アニメーター、コンポジター、プログラマー)
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場所
東京
Unity のリアルタイム機能によりプロジェクトをスピードアップさせレンダリングコストを削減
『あした世界が終わるとしても』は高層ビルが立ち並び、世界で最も乗降客数が多い駅があり、大勢の人があふれる象徴的な東京の新宿区を舞台としています。非常に複雑かつ繰り返しのシーンをモデル化してレンダリングするには、斬新なアプローチと強力なレンダリング機能が必要でした。そこで、それらのシーケンスのために Unity を選びました。
その成果は以下のとおりです。
- 個別のカット(ウォーターフォールプロダクション)よりも、シーケンスを構築して管理すること(リアルタイムプロダクション)でプロジェクトをスピードアップ
- ネストされたプレハブを利用することで、アニメーション化された要素が詰まった複雑なシーンの制作と更新が簡単に
- 自動経路検索を併用または併用せずにナビメッシュを使用して歩行サイクルをセットアップすることで、リアルな群衆の動きを制作。
- 同スタジオの従来型の 3D プログラムではなく、Unity でレンダリングすることで制作コストを削減。

若い視聴者向けに並列世界をアニメーション化
最高のサイエンスフィクションは、昔からある問題について理解を深めることを可能にします。この作品のライター兼ディレクターである櫻木優平氏にとって、サイエンスフィクションのアニメ作品は強力なストーリーテリングメディアであり、彼はこれをある具体的な目標に適用しました。それは、平和のもろさと戦争の幻影を日本の若者に気付かせることです。「戦争を経験した世代がほとんどいなくなった現代の日本において、戦争が本当はどのようなものであるか想像できる若者はほとんどいません。」
『ソウタイセカイ』は並列世界を題材とするストーリーで、比較的平穏な生彩のある世界に暮らす高校生の前に、悪夢のような戦争で荒廃した陰鬱な世界からドッペルゲンガーが現れます。櫻木氏は際立ったコントラストを活用して衝撃と恐怖を表現しました。「私は人々に、特に若者に比較的平和な時間が突然終わった場合の日本の未来について真剣に考えてもらいたいと思っています。」

複雑な群衆のシーンをセットアップ
櫻木氏は作品に現実世界を反映させたいと考えており、現代日本を最も象徴する都市の 1 つである新宿を舞台に選びました。これはつまり、チームがアニメーション化された巨大な群衆を描画して表示する必要があることを意味しました。ただし、従来型の 3D ソフトウェアでは困難であると予想されたため、Unity を活用することにしました。
「私たちは人であふれる街並みの様子などを表現するために、巨大で連続したシーケンスを作成することを計画していたため、元のモデルやリグファイルを簡単に読み込んで編集できる、ファイルリファレンスと名前空間のオプションが必要であることがわかっていました。」クラフターのリードアニメーターである内田憲氏はこう述べています。「しかし、私たちの標準の 3D レンダリングツールではそのようなオプションはありませんでした。それらのシーンを構築するために、私たちは入れ子構造のプレハブ、相対的なライトシーンの読み込み、ナビゲーションメッシュ(ナビメッシュ)などの Unity の機能も活用しました。」
クラフターの従来型のレンダリングツールとは対照的に、Unity では個々のショットだけでなく、アセットに基づいてデータを管理します。これにより、チームはすべての群衆のシーケンスを入れ子構造のプレハブアセットを使用して構築できるようになり、制作がより包括的かつ高速になりました。入れ子構造のプレハブは、その名前が示すとおり他のプレハブが含まれます。それらのプレハブには独自のアセットへのリンクが保持されるため、あらゆる更新がシーン全体にわたってリアルタイムに反映されます(Unity におけるプレハブとは、複製や編集などが簡単になるようにコンポーネントとプロパティ値がすべて含まれるゲームオブジェクトのことです)。

リアルな影を追加
群衆のシーンをうまく処理するために、クラフターは Unity の Recorder をカスタマイズして、以前は Unity の外でレンダリングされていたフレームをキャプチャーしました。その後、Unity-Chan Toon Shader(UTS)を適用して、特にキャラクターモデルの全パーツを際立たせる影で、セルシェーディングされた画像を最適化しました。UTS はキャラクターデザインの位置と光源の輝度を自動的に調整することでこれを実現します。
シェーディングをさらに強化するために、内田氏はこう付け加えています。「私たちは Unity の Timeline 機能を Shader Forge と組み合わせて使用しました。次のプロジェクトでのシェーディングに、私たちはシェーダーグラフと Visual Effect Graph を試すことを計画しています。シェーダーグラフを使用すると、開発者は視覚的にシェーダーを簡単に構築してその結果をリアルタイムで確認し、コードを書くことなくネットワークグラフにノードを接続できます。Visual Effect Graph でも視覚的なリアルタイムの UI を利用して、幅広いノードベースの VFX を作成できます。

Unity で新たな創造の世界を探る
クラフターは『ソウタイセカイ』の一部でのみ Unity を使用しましたが、櫻木氏は Unity のプラットフォームとアーティストや他のクリエイター向けの奥深いツールセットを高く評価しています。たとえば、アニメーション映像作品全体を Unity で制作することを検討しています。「Unity の数多くの独自機能を強調した作品を制作したいと考えています。」
シェーダーグラフと Visual Effect Graph 以外にも、櫻木氏は Unity の公開予定のレイトレーシングの使用を見込んでいます。「群衆シーンの影を表現することは特に難しいので、そのような課題に対応した Unity の新機能の公開を楽しみにしています。」
最後に、櫻木氏は将来のプロジェクトにおいて Unity を活用することのもう 1 つの大きな利点を見込んでいます。「Unity により混合メディアを同時に制作することが非常に簡単になっているため、映像作品のプロジェクトと同時にゲームやバーチャルリアリティコンテンツの制作を進めることができます。」そしてそれはこの革新的な日本のスタジオのモットーである「新しい制作方法を作り出す」ことを完全に体現しています。クラフターの次回作を楽しみにしています。