この世のものとは思えない美しいゲームアートを制作

『Hardspace: Shipbreaker』の高度にリアルな環境とエフェクトの背後にあるテクノロジー

Blackbird Interactive:Unity のケーススタディ

エイリアンや敵が出現しない SF ゲームで胸が高鳴るようなわくわく感を盛り込むにはどうすればよいでしょうか?暗くて寒い宇宙空間においては、その環境すべてが敵となることを覚えておくことです。『Hardspace: Shipbreaker』では、ジャンクの宇宙船をサルベージすることで Lynx Corporation に借金を返済します。ですが、十分に気を付けてください。爆発を引き起こしてリスポーンするはめになると、借金が増えてしまいます。この近未来を舞台とした非常に緻密で没入感のあるビジュアルを備えたサスペンスに満ちたゲームに命を吹き込むために、Blackbird Interactive (BBI) は Unity を選択しました。

  • 課題

    BBI のアーティストが目標とするゲームのビジュアルを実現するために必要なツールとワークフローを提供しつつ、コラボレーションを簡単に行えるようにして開発をスピードアップする

  • プラットフォーム

    PC(Steam で早期アクセス)

  • プロジェクトのスタッフ

    最大で 25 人のアーティストと開発者

  • 所在地

    バンクーバー、カナダ

BBI がこの世のものとは思えないほど素晴らしい、スキルベースのゲームを制作

Hardspace: Shipbreaker』のゲームのコンセプトから、スタジオは宇宙での生活を忠実に表現することでプレイヤーに畏敬の念を抱かせたいと考えていました。また、無重力下におけるオブジェクトの動作と衝突を物理学上正確に表現する必要もありました。 

これは、完全に動的な環境用にベイク品質のアートワークを制作すること、プロセスを統合して効率的にすること、開発とコラボレーションを行うより優れた方法を常に探し続けることなど、大きな課題をもたらしました。プロジェクトの開始は 4 年以上前であり、BBI チームは、この宇宙を舞台とするゲーム史上最もエキサイティングなゲームの 1 つを完成させるまでに、数々の技術的な障壁を打ち破り、数えきれないほどのアーティスティック手法を刷新し、数多くの「すごい」と口から漏れる瞬間を共有してきました。

成果

  • コンセプト実証を明確にするために ProBuilder と Cinemachine を活用して迅速にグレーボクシング
  • ほぼ即時のラウンドトリップにより FBX 形式の 3D デジタルアセットのワークフローを高速化 
  • Visual Effect Graph のおかげで、何千もの一意のオブジェクトがある爆発のリアルタイムパーティクルエフェクトの高い現実感のあるビジュアルを、パフォーマンスラグなしで実現 
  • 入れ子構造のプレハブにより、「舞台裏」のプロセスにアーティストがより関与できる
  • Unity の HD レンダーパイプライン(HDRP)により、これまでにないレベルのエリアおよびボリューメトリックライティングエフェクト

プレイヤーをストーリーに引き込む

当初より、BBI チームはプレイヤー(「解体人」と呼ばれる)に、勝算が少ない状況で成功を収めるために必要なスキルを磨くというプレッシャーの下、宇宙の過酷さと孤独を感じてもらいたいと考えていました。しかし、これはスーパーヒーローとなるゲームではありません。豊富なビジュアルを備えた環境の中を移動して作業する中で、プレイヤーはそれぞれ独自のストーリーを作り出します。 

「それが私たちにとっての没入型の体験を大きな部分を占める」と、『Hardspace: Shipbreaker』のゲームディレクター Trey Smith 氏は述べています。「自分自身としてプレイし、ストーリーの一部となります。たとえば、手はランダムボットのような手ではなく、自身の手と感じてもらえるようにデザインしています。高度にリアルなアニメーションとエフェクトも不可欠でした。それらがプレイヤーにとってゲームプレイの基礎となる要素であるため、やっている作業により力を注いでもらうことができます。」

その結果、想像できる中で最も動的かつ豊富なゲームプレイ環境の 1 つが仕上がりました。プレイヤーが機械を操縦して切り込みを入れると、電気の火花が飛び、高電荷の設定では爆発します。リアルなツールを操作したり、標識を読んだり、綱や鎖をつないだり、狭い空間を移動したり、暗い影や宙を舞う粒子に適応したりと、さまざまな要素があります。すべてが無重力の、上下がわからない環境で行われます。そして、各プレイヤーのジャーニーは唯一のものであるため、素晴らしいストーリーが個々に展開されます。

根本にあるのはアートと宇宙空間

この広大なドラマをまとめるのは徹底して現実感のあるビジュアルにかかっており、スタジオの中心にあるのはビジュアル志向であったため、スタジオはその課題に意欲的に取り組んでいました。「当スタジオの創立者はすべてアートディレクターであり宇宙ギークですが、ゲームプレイが最優先であることもわかっています。そのため、私たちはプレイヤーにこのユニークで絵画的な環境の中に入り込み、その中でプレイしてもらいたいと考えています」と、アートディレクターの Chris Williams 氏は述べています。「そして、これらの 2 つの重要な要素をシームレスに結合するのを、Unity が支援してくれます。」

『Hardspace: Shipbreaker』のテクニカルディレクター Richard Harrison 氏によると、実質的にチーム全員が Unity で作業していたということです。「Unity は素晴らしいゲームエンジンですが、それだけでなく、開発をうまくスタートさせ、コンセプト実証に非常に迅速に到達する必要がある開発者にとっても役立ちます。」これは、(社内ゲームジャム中に)そのゲームが生まれ、アートに関わるいくつかの重大な課題を解決する必要があったときに、チームのサイズが小規模であることを考えると特に重要でした。

Unity のコアゲーム構築ツール

BBI は ProBuilder を活用して大量の宇宙船やその他 3D モデルを適切に操作、テスト、制作する方法を決定します。「ProBuilder により、当スタジオのデザイナーは宇宙船のレイアウトとゲームプレイの小道具のプロトタイプを作成できます。このゲームではオブジェクトの寸法やその他指標が非常に重要であるため、アート制作チームに最終的なメッシュを依頼する前に、概略図を大まかに描くことを短時間で繰り返し、オブジェクトのサイズを決めることができました」と、BBI のアソシエイトクリエイティブディレクター Elliot Hudson 氏は述べています。「アーティストが効率的なグレーボックスパイプラインをビルドするのに本当に役立ちます。」

非常に緻密でリアルなアニメーションを数多く制作するために、BBI は Timeline を使用しました。たとえば、プレイヤーが作業を開始すると、格納庫のすべてのライトをオンにすることと、宇宙船の電源を作動することの背後に Timeline があります。「当スタジオのアニメーターは Timeline を初めて使ったときに気に入り、そのような素晴らしいディテールでゲームの現実感を強化する可能性をすぐに見出しました」と、Harrison 氏は述べています。 

また、重要なデザインの段階に Cinemachine の高度なカメラツールを使用しました。「当スタジオの開発者は、Cinemachine を使用して私たちがやろうとしていたことの雰囲気や調子をキャプチャすることで、コンセプト実証を短時間で作成できました。タイムラインをスクラブしてそのビューでカメラを見ることができることは、特に便利でした。」BBI のゲームディレクター Trey Smith 氏はこのように述べています。

独自のツールを強化する

プロジェクト全体にわたって、BBI は Unity での取り扱いが容易な一連のツールを構築しました。たとえば、コアシェーダーテクノロジーの大多数はそのゲーム用にハンドコードされていましたが、開発者は Unity の HD レンダーパイプライン(HDRP)機能を利用するためにシェーダーグラフを多用することを想定しています。 

「以前は宇宙船すべてを再 UV していましたが、マテリアルのプロパティをその場で動的に変更できるように、プロパティブロックなどの機能を活用し始めました。それ以降、HDRP バックエンドを使用する、うまくまとめられた Unity のシェーダーを使用しています。当スタジオのテックウィザード Karl Kent が HDRP テクノロジーと連携するようにそれを制作しました」と、Harrison 氏は述べています。 

BBI のプロジェクションツールは、宇宙船をランタイムにペイントするときのダイナミズムを高めるために、HDRP など Unity のさまざまな側面を活用しています。また、カスタムプロジェクションデカールシステムを使用して、隔壁の危険サインなど、宇宙船の中で冷静に警告を出すことでさらに雰囲気を高めています。 

現実感を高めるためにアニメーションを追加する

Harrison 氏によると、宇宙船にはそれほど多くのアニメーションがなく、ドアを開けるためのハンドルやドア自体など、あちこちに使用されていますが、少数であるということです。「私たちが作成するアニメーションの多くはテクスチャアニメーションにベイクされます。これは、コンピューター画面のライトなど、プレイヤーが作業を進めるにつれて目にするものです。MaterialPropertyBlock のおかげでリアルタイムに変更を加えることができるため、本当に助かっています。」 

同スタジオが取り組んだ最も複雑な物理アニメーションは、唯一無二のキャラクターである、解体人です。「私たちはアニメーターに Mecanim を使用してキャラクターをリグアップし、全体を動的にアニメーション化してもらいました。これは完全にステート駆動かつパラメーター駆動です。どこを移動しているか、どのように流されているか、プレイヤーの速度が考慮されます。」 

もちろん、これは一人称視点のゲームであるため、プレイヤーは自身の手と足および時間とともに移り変わる反射や影しか実際に見ることができません。「左に流されると自身の脚が右に遅れてついてくることに初めて気付く瞬間は非常に感動します。それがキャラクターに重量感と存在感を与え、プレイヤーが無重力の環境にいると『感じ取れる』ようになると考えています。」Harrison 氏はこのように付け加えています。

入れ子構造のプレハブにより時間を節約する

ゲームの 3D 要素の多くは Unity 外で作成されるため、Maya などの 3D モデリングソフトウェアとの間の迅速なラウンドトリップは、繰り返しのプロセスを簡略化してスピードアップするために特に重要でした。William 氏はこう述べています。「一部の Unity 以外の環境では、FBX モデルの変換に半日かかることもありますが、Unity ならほぼ瞬時に行えます。」BBI は Unity ワークフロー内に統合されたカスタムエディターを構築し、これによりアーティストがアセットを右クリックして、それを瞬時にゲームオブジェクトに変えることができます。

アーティストの生産性を大幅に高めたもう 1 つの機能は、入れ子構造のプレハブでした。これにより、宇宙船を数多くの小さなプレハブで構成されるプレハブとしてビルドできます。これには複数のより小さなプレハブが含まれるため、外観を変更する必要があるときは、一度変更を加えるだけでモデル全体に反映されます。ワークフローの面では、これによりアーティストが「内部構造」を理解し、コーディングすることもプログラマーに頼ることもなく、独自にコンポーネントを組み立てることができます。William 氏はこう述べています。「私たちはついにこの便利な機能を使用してモジュール化された宇宙船のシステムを完成させました。入れ子構造のプレハブなしでは、現在の立ち位置には到達できなかったでしょう。」

常に最新バージョンの Unity の機能と同期されるという面で、チームは Package Manager を介した定期アップデートに信頼を置いています。「私たちは数多くの統合されたパッケージを使用するため、待ち望んでいた機能強化やバグフィックスが含まれている可能性がある新しいバージョンがあるときに同期できることは本当に便利です。Package Manager は、私たちのワークフローを強化する重要な要素です。」Harrison 氏はこう述べています。

パーティクルを全体的に追加する

ゲーム全体を大幅に強化するために、BBI が制作と管理の担当者として、同スタジオの才能にあふれるビジュアルエフェクトアーティスト David Perdigon 氏を指名したことは不思議なことではありません。そして、Visual Effect Graph が利用できるようになると、同スタジオはそれをすぐに採用し、それが Flipbook や Shuriken パーティクルシステムなどの従来のツールと比較して、使用や調整が簡単で、はるかに多くのデジタル入力を処理できることに気付きました。 

ゲーム内に目を引くパイロテクニクスを追加することは刺激的である一方で、ほとんどの場合はパフォーマンスと引き換えであり、同スタジオにとってとても呑み込める条件ではありませんでした。しかし、Visual Effect Graph でパーティクルを実装したときに、BBI は多数のパーティクルを効率的に管理し、より素晴らしいエフェクトをより頻繁に追加できることがわかりました。 

これは、主に Visual Effect Graph がパーティクルをポストプロセッシングスタックとライティングにスムーズに統合できるからです。「Visual Effect Graph に切り替えたことで、パフォーマンスが大幅に上昇し、パーティクルがジオメトリの横に存在するではなく、実際に世界に統合されているように感じられるようになりました」と、Harrison 氏は述べています。また、同スタジオは Bloom やその他 Unity のカラーバランス調整ツールも利用して、目を見張るようなゲームのビジュアル要素を徐々に高めています。

すべての環境をライトアップする

宇宙に実際にありそうな美しいライトやシャドウを生成する秘訣は、HD レンダーパイプライン(HDRP)でした。たとえば、格納庫のシーンには 4 つか 5 つの影を投影するライトが存在する可能性があり、開発者は移動する指向性音源でその反射光のバランスを調整し、位置を合わせる必要がありました。「HDRP なら、すべてが非常に応答性が高く、簡単に理解してすぐに使い始めることができました」と、Williams 氏は述べています。 

また、HDRP は遺棄された宇宙船内部に非常に説得力のあるエリアライティングを作成するのを支援し、緊張を高めています。たとえば、チームはボリューメトリックライティングを使用して、解体人が宇宙船に圧力をかけたときの「汚れた空気」のエフェクトを作成し、ほこりや吹き流される粒子を表現しています。これにより、ヘッドランプのビームが夜の空を照らすサーチライトのように鮮やかになります。HDRP を使用する前は、BBI はサードパーティ製のツールを使用してこの種のボリューメトリックエフェクトを模倣しようとしましたが、コストがかかり限定的であることがわかりました。Williams 氏はこう述べています。「Unity の HDRP の力は、全ライティングモデルに対するそのシステマチックなアプローチにあり、それが私たちのニーズに完全に満たします。」

Unity との今後の見通し

BBI では、ゲーム開発プラットフォームを慎重に選定しており、プロジェクトにとってどのようなテクノロジーとツールが最も適しているかを自問し、その後技術、デザイン、アートの面から包括的に評価します。「当スタジオ初のゲーム『Homeworld: Deserts of Kharak』を完成させた直後に、『Hardspace: Shipbreaker』に Unity を選択したことは、大きな意味があることであると考えています。そして、『Hardspace』がライブになった今、私たちの最初の評価は正しかったと断言できます。Unity は確実にアート、テクニカル、ビジネスの面で私たちのニーズを満たす正しい選択肢でした」と、Harrison 氏は締めくくっています。今は同スタジオは Unity の力を最大限発揮し、フルリリースに向けて新しい機能やゲームコンテンツを制作するのに忙しくしているとだけ言っておきましょう。そしてその結果は、この美しく写実的な「肉体労働」ゲームの中で独自のストーリーを描いている数多くの解体人をきっと感心させるものになります。

Chris Williams, Art Director, Blackbird Interactive

「当スタジオの創立者はすべてアートディレクターであり宇宙ギークですが、ゲームプレイが最優先であることもわかっています。そのため、私たちはプレイヤーにこのユニークで絵画的な環境の中に入り込み、その中でプレイしてもらいたいと考えています。そして、これらの 2 つの重要な要素をシームレスに結合するのを、Unity が支援してくれます。」

Chris Williams, Art Director, Blackbird Interactive
Richard Harrison, Technical Director, Blackbird Interactive

「当スタジオ初のゲーム『Homeworld: Deserts of Kharak』を完成させた直後に、『Hardspace: Shipbreaker』に Unity を選択したことは、大きな意味があることであると考えています。そして、『Hardspace』がライブになった今、私たちの最初の評価は正しかったと断言できます。Unity は確実にアート、テクニカル、ビジネスの側面で私たちのニーズを満たす正しい選択肢でした。Unity は素晴らしいゲームエンジンですが、それだけでなく、開発をうまくスタートさせ、コンセプト実証に非常に迅速に到達する必要がある開発者にとっても役立ちます。」 

Richard Harrison, Technical Director, Blackbird Interactive
Elliot Hudson, Associate Creative Director, Blackbird Interactive

ProBuilder により、当スタジオのデザイナーは宇宙船のレイアウトとゲームプレイの小道具のプロトタイプを作成できます。このゲームではオブジェクトの寸法やその他指標が非常に重要であるため、アート制作チームに最終的なメッシュを依頼する前に、概略図を大まかに描くことを短時間で繰り返し、オブジェクトのサイズを決めることができました。アーティストが効率的なグレーボックスパイプラインをビルドするのに本当に役立ちます。」

Elliot Hudson, Associate Creative Director, Blackbird Interactive
Trey Smith, Game Director, Blackbird Interactive

「当スタジオの開発者は、Cinemachine を使用して私たちがやろうとしていたことの雰囲気や調子をキャプチャすることで、コンセプト実証を短時間で作成できました。タイムラインをスクラブしてそのビューでカメラを見ることができることは、特に便利でした。」 

Trey Smith, Game Director, Blackbird Interactive

もっと色々と知りたい方には

Blackbird Interactive の Trey Smith 氏と Richard Harrison 氏を招待したゲームポッドキャストの舞台裏をご覧ください。

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