Harold Halibut

制作者: Slow Bros.
The studio
思いもよらない出発点

ビデオゲーム開発者の世界では、コラボレーションには通常アニメーション、モデリング、テクスチャ、エフェクトといった分野のスペシャリストが参加します。新しいゲーム開発会社の Slow Bros. は、それをさらに推し進め、物理的なセットデザイン、大工仕事、ファッションデザインの専門家まで巻き込んでいます。

実は、4 人いる創設者の中で一般的なゲームクリエイターとしてのバックグラウンドを持っているのは、Onat Hekimoglu 氏 1 人だけです。彼と一緒にドイツでスタジオを立ち上げたのが、日曜大工を趣味とする写真科の学生だった Fabian Preuschoff 氏、生物学科の学生だった Daniel Beckmann 氏、フリーランスイラストレーターの Ole Tillmann 氏です。

Team Harold!

Team Harold!

6 年ほど前、4 人の友人たちはそれぞれ別の仕事をしながら『Harold Halibut』についてのブレインストーミングを始めました。彼らの最初のゲームのプロトタイプは、Onat 氏が Cologne Game Lab で執筆したゲームデザインに関する修士論文のテーマでもありました。2 年半前に政府助成金を獲得した Slow Bros. は正式に法人化し、『Harold Halibut』がいよいよ形になり始めました。彼らは実物のモデル作成、彫刻、塗装、裁縫に集中的に取り組み、併せてこれらの現実世界のオブジェクトをデジタル世界に取り込むために必要な技術的知識の習得に努めました。

The project

ゲーム内では Harold が難破した船内都市のセクション間を移動しながら、水中に住む他の居住民と会話を通じて関係を構築していきます。それぞれのシチュエーションには複数の経路からアプローチでき、自分でストーリーを選んでいるような感覚が得られる演出になっていますが、スタジオ側ではあくまでも 1 つのエンディングに向かうように制作しています。

「私たちにとって非常に興味深かったのは、この難破した宇宙船の探検です。外的な影響から切り離されているので、常識では考えられない独自の進化を遂げています。かなり奇妙な状況ではありますが、全員がそれぞれの日常生活を送らなければなりません。Harold はこの巨大なコミュニティのメンバーの 1 人にすぎない、ただの管理人ですが、奇妙なイベントの数々に巻き込まれていきます。この一風変わったダイナミズムが、発生するあらゆる出来事をいっそう魅力的なものにしています」

管理人のお手柄

手作りアートにふさわしく、『Harold Halibut』は友情物語に重点を置いた突飛でユーモラスなアドベンチャーゲームです。地球を出発してから 250 年の旅路の末にエイリアンが住む星に取り残されて 50 年が経過したコミュニティの中で、Harold はこの水に囲まれた世界に暮らすたくさんのキャラクターのうちの 1 人でしかなく、抜け出す手段のない水中で一生を過ごす運命にあります。

『Harold Halibut』はポイントアンドクリックゲームのように思われるかもしれませんが、Slow Bros. は意図的にそのメカニズムを避けています。「私たちにはそれぞれお気に入りのポイントアンドクリックアドベンチャーがありますが、それではテンポが悪いと思ったのです。これは『探してつなげる』パズルではなくて、会話とストーリーで進むゲームなので、最新のコントロールスキームを採用する方がはるかに理に適っていました」

The reveal
手作りとテクノロジーの融合

現実世界のオブジェクトを使ってゲーム内のアセットを作成したゲームは『Harold Halibut』が初めてではありません。紙や粘土を使って作成されたゲームは、いずれも数本リリースされています。『Harold Halibut』が普通でないのは、そのアートの規模です。家具だろうが衣服だろうが、シーン内のすべてのアセットが、チームで手作りしたものを Capturing Reality というフォトグラメトリツールでキャプチャしたものなのです。

興味深いことに、また、実に好都合なことに、ライティング除去ツールが必要なアセットは 1 つもありません。それぞれのアセットをキャプチャする際にターンテーブルを使用したことで、どの角度からでもモデルに一貫して完全なライティングを施せるからです。フラットな表面とテクスチャ用にチームが使用したのは、APEC Visual のマテリアルスキャナーでした。画像のキャプチャが完了したら、Substance Painter と Substance Designer でゲームのテクスチャを作成します。

Onat が『Harold』でモーションキャプチャーを解説します

登場する美しい造形のキャラクターが、伝統的なストップモーション技術を使って手作業でアニメーション化されていると思い込んでしまうのも無理もありません。しかし驚くべきことに実は、Slow Bros. はパペットに命を吹き込むためにモーションキャプチャを大いに活用しているのです。Hekimoglu 氏は「元のモデルの動きを正確にトレースするように設定しておけば、モーションキャプチャはストップモーションとほぼ同じように見えます。時々モーションキャプチャファイルをあえて整理しないでおくとランダムなジッターが発生し、これがかえってストップモーション感を高めてくれます」と述べています。

数百万を稼ぎ出す小さなチーム

Slow Bros. では『Harold Halibut』で使うものをほぼ手作りしていますが、それでも比較的小規模な職人と開発者のチームを雇っています。大きな仕事をするため、彼らは Unity コミュニティと Asset Store でもっと便利なツールを探しました。これにより作業が楽になり、ストーリーテリングという仕事に集中できるようになっただけでなく(たとえば Adventure Creator パッケージを利用)、精魂込めた作品を、確実にあるべき姿で画面に映し出すことができるようになりました。

『Harold Halibut』の独自のビジュアルスタイルは大きな注目を集めていますが、Slow Bros. はあらゆるツールを新しい絵筆のようなものだと考えています。たとえば Next-Gen Soft-Shadows アセットをチームは大いに活用しています。「そのソフトシャドウは見栄えが良く、Unity の標準的なシャドウに比べてそれほど高価でもありません。シーン内でパペットの見た目をリアルに表現することがとても重要なのですが、NGSS のシャドウのおかげで限りなく現実に近い表現ができています」と Heimoglu 氏は述べています。

Adventure Creator was just one of many helpful add-ons from the Asset Store

Adventure Creator was just one of many helpful add-ons from the Asset Store

手作りの物理アセットから生成された、膨大な量のスキャン済みテクスチャをごく細部に至るまで維持することは、当然のことながら、とても重要な課題でした。Amplify Creations のチームが、ソリューションとして Amplify Texture を提供しました。「私たちがスキャンしたアセットの大半は、8K の大容量です。Amplify Texture のおかげで、メモリ制限を気にすることなく仮想テクスチャリングを通じて、これらのアセットを使用できます。これがなければ、実現できなかったでしょう」

ストーリーを伝えるだけにとどまらないストーリーツール

Hekimoglu 氏と仲間たちは、5 年前に Unity 4 での開発を開始しました。そのとき『Harold Halibut』は、プロトタイプができたばかりの状態でした。当時から Unity には豊富な機能が搭載されていましたが、Slow Bros. チームにとってなにより重要だったのは、Unity 2017.1 で導入されたストーリーテリングツールでした。

Hekimoglu 氏が説明するところによると、「Timeline と Cinemachine の組み合わせは映像制作者にとっては自然なアプローチです。ノンリニア編集は映画のような壮大な場面でものを言いますが、実はその他にもいろいろ便利な用途があります。私たちはエレベーターの挙動といったごく簡単なことにも Timeline を使用しています」とのことです。

Cinemachine cameras are used extensively

Cinemachine cameras are used extensively

チームはゲーム内のすべてのカメラを Cinemachine に置き換えました。中でも、すべてのインタラクションに状態ベースのカメラを追加していた、ゲーム内で頻発するダイアログセクションほど効果と効率の面で得るものが大きかったものはありません。Hekimoglu 氏は続けて、「これまでは手作業でカメラを切り替えなければなりませんでしたが、今ではアニメーションフェーズにカメラを紐付けるだけで、一方がアイドル状態になるとカメラがもう一方のキャラクターに切り替わるようになりました。必要に応じて特別なショットを使うこともあります。でも、はたから見ると些細な変化に見えるかもしれませんが、これら 2 つのメインショットが自動的に切り替わるようになったことで大幅に時間を節約できています」と述べています。

Unity のアートとデザインのツールがあなたのビジョンを形にするお手伝いをします!

弊社のウェブサイトは最善のユーザー体験をお届けするためにクッキーを使用しています。詳細については、クッキーポリシーのページをご覧ください。

OK